アメリカで最も人気のNetflixシリーズ作品

Netflixで最近配信したフランスの『ルパン』シリーズでは、よく見えるところに物を隠すという大掛かりなトリックが披露されました。イギリスのショーランナー(現場責任者)であるジョージ・ケイが制作指揮をとったこの作品は、フランスの有名なキャラクター、アルセーヌ・ルパンにインスパイアされて作られたものであり、115年以上も前に創造されたキャラクター(作家モーリス・ルブランは1905年にルパンを生み出しました)を、たった1日で消費してしまうほどスムーズかつテンポの良い逃避行ストーリーに凝縮しています。

主演のオマール・シーは、底知れぬカリスマ性をもつフランス人俳優であり、ほかの共演者よりも圧倒的な存在感を放っています。彼が演じる主役のアサン・ディオプは、黄金の心をもった詐欺師です。その堂々とした風貌を変化させ、誰にも止められない詐欺の達人として活躍します。

この作品は1話あたり約43分で、エピソード数もわずか5話という短さ(今年中に追加予定)だったため、アメリカではほとんど注目されていませんでしたが、配信からたったの1週間でNetflixの視聴者ランキング2位を獲得。フランスのシリーズ番組がアメリカ市場で初めてトップ10入りするという快挙を成し遂げました。

『ルパン』は、まるで映画『オーシャンズ11』のような迫力と、第一作目の『ナショナル・トレジャー』の非現実的な興奮や文化伝承を融合させたような作品なので、その人気は当然です。『ナショナル・トレジャー』では、ニコラス・ケイジが独立宣言書を盗みましたが、『ルパン』シリーズのアサンは、25年間行方不明となった後にオークションにかけられるマリー・アントワネットの宝石をルーブル美術館から盗むという、こちらもあり得ない展開から始まっています。

アサンは、周囲が考える以上に賢い人物です。アルセーヌ・ルパンの熱心なファンであり、片眼鏡とシルクハットをまとった古典的なフランス紳士の泥棒なのです。

実はシー自身も、ルパン・ファンの一人です。この作品は、シーが『Intouchable』でセザール賞を受賞し、ハリウッドでキャリアを積み上げたため、好きな役を自由に選べるようになったことで誕生しました。「イギリス人ならジェームズ・ボンドと言うでしょうが、私はフランス人なので、ルパンにしました」とシーは述べています。

この作品では、アサンの驚くほど低予算の強盗計画が、モンタージュ技法で披露されます。その過程では、彼の計画内容が次第に明らかにされていきます(ネタバレはここまでにしておきます。彼がどうやってネックレスを手に入れるかは、見てのお楽しみですね)。アサンの父であるババカル(ファルガス・アサンデ)は、セネガルからの移民であり、パリの裕福な白人家庭の運転手として働いていましたが、25年前にネックレスを盗んだ罪を着せられてしまいます。

なんと彼は牢獄で自殺。孤児となったアサンには、ルパンの本と復讐心だけが残されます。

お馴染みのキャラクターに斬新なアレンジを加えたこの作品は、視聴者をあっという間に引き込んでいきます。

各エピソードは、本当あっという間に終わります。その中でアサンは、自身の立場を明らかにし、過去の出来事を「平和への熱望」「盗みのプロの準備」「絶対的な力」の一連の流れとして見つめ直します。アサンは「ルパンの一歩先を行くすばらしい絶対能力」について100年前の原作を引用しつつ、ルパンという天才詐欺師(時と言葉の壁を超えた泥棒の魅力)の映画化についても語っています。